写真は、ロシアの軍事作戦中、クルスク州で、アハマド特殊部隊のロシア軍兵士がウクライナ軍陣地に向けてD-30榴弾砲を発射する© Sputnik/Sergey Bobylev
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日本時間04月22日01:16 ロシア・トゥデイ(RT)
by セルゲイ・ポレタエフ(分析)
Sergey Poletaev
情報アナリスト、広報担当者、Vatfor プロジェクトの共同創設者兼編集者。
「トランプは取引を望んでる。プーチンは勝利を望んでる。ウクライナは当然の報いを受けるだろう」
ヨーロッパがウクライナに武器を供給し、アメリカのエリートたちが事態の悪化を煽る中、平和はアメリカが許せない唯一の選択肢かもしれない。
イースター休戦は終わり、ロシアとウクライナは数千件の違反を互いに非難し合い、前線での戦闘が再開された。
この戦争を終わらせるのがいかに難しいかを改めて思い知らされる。新たな戦闘が激化する中、ドナルド・トランプ大統領が長年約束してきた和平計画は地政学的現実と衝突している。クレムリンとの裏チャンネル交渉や、同盟国と反対派からの圧力が高まる中、トランプは降伏に等しい合意や自身の政治的立場を損なうような合意をまだ提示できていない。新たな攻勢が迫り、忍耐が限界に近づく中、真の課題は平和がまだテーブルの上にあるかどうか、そしてもしあるなら、誰の条件で、ということだ。
■平和への執拗な推進
ドナルド・トランプ大統領と前任者のジョー・バイデンとの根本的な違いは、トランプがロシアとの意味のある平和を本気で交渉しようとしている点だ。
彼はバイデンから引き継いだ「敗北必至の戦争」を延命させるつもりはなく、終わらせる決意だ。しかし、どんな合意でも受け入れるわけにはいかないことも知っている。彼は「敗北に見えない平和」が必要なのだ。結局、彼の批判者は、どんな妥協も彼の個人的なアフガニスタン問題として描こうとしている。これがトランプが働いている枠組みだ。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の動機は、彼(トランプ)にとって本当に重要な問題ではない。そのため、彼は信頼する側近スティーブ・ウィトコフを派遣し、クレムリンとの合意の可能性を探らせている。
ウィトコフはプーチンとの会談で、ロシアの指導者が公の場で、そしてトランプとの私的な電話でも繰り返している強硬なメッセージを聞いただろう。持続可能な平和はモスクワの条件下でしか実現できないというものだ。
最低限、それはイスタンブール合意の復活と追加の領土譲歩を意味する。最大では、ロシアが2021年に提示した東欧の安全保障構造の再編を求める広範な要求、つまり冷戦の遺産を逆転させる事を含む。
また、プーチンは、少なくとも最低限の目標は武力行使で達成できると考えているようだ。ブラフかどうかは別として、彼はエスカレーションの脅威を利用してトランプに圧力をかけている。
トランプのメッセージは明白である。ウクライナの崩壊があなた(プーチン)の責任にされるのを心配しているか?それを防ぐ方法は一つだけだ——私と取引をしろ。その見返りに、トランプは面子を保ち、ノルドストリーム2のような経済的利益を得られ、任期中に平和を主張できる。
一方、プーチンは、彼が本当に望んでいるもの、つまり、アメリカとロシアの関係の改善、制裁の解除、そして最も重要な、ウクライナでのロシアの行動の正当化を手に入れること。そして、将来、紛争が発生した場合、彼はより有利な立場に立つことができる。言うまでもなく、それは、2人が共通の敵とするグローバリストたちに打撃を与えること。これがプーチンが主張している内容で、全ての兆候から、これが彼とウィットコフが5時間に及ぶ会談で議論した内容だ。
ウィットコフは、4月15日のフォックスニュースの出演で、その内容を明言しているが、最終的な判断はトランプにあり、ウィットコフではない。トランプは困難な課題に直面している。たとえ合意を望んでも、それを維持する方法をどう確保するかだ。ウクライナやヨーロッパが交渉を妨害しようとしているのは予想通りだが、反対はトランプ自身の陣営からも出ている。
例えば、キース・ケロッグだ。彼はトランプに、ウクライナはそんな合意を決して受け入れないと伝えるかもしれない。彼は、ヨーロッパはキエフと完全に一致しており、トランプが本当に平和を望むなら、プーチンにウクライナへのヨーロッパの軍事存在を受け入れさせる必要がある、と主張するかもしれない。平和が欲しいなら、これが地図だ——実現させろ、と。
それから、マルコ・ルビオ国務長官も、静かに、でもしっかりとグローバリストの考えを推し進めるかもしれない。どんな平和も、ロシアの条件ではなく、西欧の条件に基づいて成立すべきだってね。彼は、新たな制裁措置やウクライナへの軍事援助パッケージをテーブルに持ってくるかもしれない。これは2016年の状況を彷彿とさせる。当時、トランプはプーチンと友好的な関係に見えたが、国内の制約から対ロシア措置を拡大した。現在、彼の国内での政治的立場は強固だが、賭け金も高まっている。
■蛇と亀の寓話
今のところ、トランプ大統領は抵抗が最も少ない道を選んでいる。彼は、公正で実現可能だと考える停戦案を打ち出している。しかし、この案はロシアの最低限の要求にも満たない。本質的に、トランプ大統領は凍結を提案している。ウクライナは非公式に領土を失い、西側諸国から安全保障の保証は得られないが、軍隊、政府、反ロシア外交を追求する自由は維持できる。
これにより、微妙な対立状態が生まれている。両者は互いに受け入れられない和平条件を提示しつつ、合意が成立しない場合、エスカレーションすると暗に脅かしている。プーチン大統領の潜在的なエスカレーション措置については既に検討していた。トランプ大統領については、交渉が破綻した場合、これまでで最も厳しい対ロシア制裁を科すと脅している。その脅しが本気かどうかは別として、重要なのはこれである。
ホワイトハウスはキエフへの軍事支援を静かに後退させている。最近の漏洩情報によると、欧州の武器供与継続推進に対する躊躇だけでなく、不満が拡大しているようだ。これは理にかなっている。もしトランプがウクライナへの新たな支援を承認すれば、彼はバイデンの外交政策を継続しているように見え、まさに彼が繰り返し「災難」と非難してきた戦略を継承することになるからである。しかし、グローバリスト勢力は、彼をまさにその結果に追い込もうとしているようだ。
今のところ、モスクワとアメリカは、お互いに意味のある一歩を踏み出すことができない、あるいは踏み出そうとはしていないようだが、どちらの側も失敗を認めたくないし、新たなエスカレーションの連鎖を引き起こしたくないのである。誰が先に折れるか、様子見のゲームになっているのだ。この対立はいつまでも続くわけじゃない。トランプは、新しい軍事援助について直ちに決断を下す必要があり、プーチンは春から夏にかけての好機を逃さず、新たな攻勢に出るだろう。
■次に何が起こるのか?
5 月中旬までは大きな動きは予想されていない。アメリカの高官が、モスクワで開催される第二次世界大戦勝利 80 周年記念式典に出席するとの噂もあるが、プーチン大統領は、悪いニュースで式典を台無しにするようなことはしないだろう。
■不測の事態を除けば、次の3つの可能性のある展開が考えられる。
1.現状維持:
ロシアとアメリカの和平交渉が停滞し、トランプ大統領は現状維持とウクライナ支援の姿勢を堅持する。ロシアの夏の攻勢は、昨年同様、ゆっくりと展開し、ウクライナの防衛線を時間をかけて消耗させる可能性がある。
2.南ベトナムのシナリオ:
トランプとプーチンが合意を結び、トランプはウクライナから手を引き、責任を欧州とキエフに転嫁する。停戦は長続きせず、両首脳の個人的な保証に依存するだけで、根本的な対立は未解決のまま残る。
3.ウクライナの完全崩壊:
これは、プーチン大統領がほのめかしているシナリオ。ロシアが、ウクライナの戦線を崩壊させる決定的な軍事攻撃を行う。そうなれば、キエフはアメリカとヨーロッパを排除して、モスクワと直接交渉を迫られるかもしれない。
■なぜ平和は不可能なのか?
なぜ私たちは今、持続的な平和を信じられないのか?それは、関係者が平和の姿を一致して理解していないからである。トランプはウクライナやヨーロッパに合意を強要できない。その状況が変わらない限り、戦争は続くだろう。
そして、停戦か否かに関わらず、最終的な結果は戦場で決まるだろう。
以上。
日本語:WAU
ウクライナ紛争と中東の戦争:バイアスを超えて
世界的な紛争は、私たちの情報源に大きな影響を与えています。特にロシアとウクライナの紛争、およびイスラエルとハマスとの戦争については、我々が日本で入手する情報のほとんどが、西側を中心としたウクライナ支持側からの発信に限られていると言えるでしょう。しかし、これらの紛争について客観的に理解するためには、当事者両方の主張を聞くことが重要です。
フェイクニュースの流布も問題ですが、我々は自己分析を行い、情報を適切に判断する能力を持っています。特に外交政策に影響を与える問題については、慎重なアプローチが求められます。誤った情報に基づいて判断を下すことは、国際的な関係において取り返しのつかない損失を招く可能性があります。
したがって、ウクライナ紛争と中東の戦争が続く限り、我々はロシアやロシアに制裁を課すことに反対する国々のニュースや論説を積極的に紹介し、バイアスを超えて客観的な視点を持ち続けます。
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