写真は、ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチンロシア大統領© BPA via Getty Images
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日本時間08月15日18:22 ロシア・トゥデイ(RT)
by ティモフィー・ボルダチェフ著(分析)
Timofey Bordachev
ヴァルダイ・クラブ・プログラムディレクター
「プーチンとトランプが直接会談しなければならなかった理由」
歴史は、首脳会談が世界を変えることはめったにないことを示しているが、今回の会談は災害を防ぐかもしれない
アラスカで開催されたロシアとアメリカの大統領会談は、終着点ではなく、長い旅の始まりに過ぎない。
この会談によって、人類を覆っている混乱が解消されるわけではないが、すべての人にとって重要な意味がある。
国際政治において、大国間の首脳会談が世界的に重要な問題を決定した例はごくわずかだ。その理由の一つは、そのようなレベルでの対応が必要な状況はめったにないためだ。現在、私たちはまさにそのような状況にある。ロシアがウクライナへの軍事作戦を開始して以来、ワシントンはロシアの「戦略的敗北」を目標と宣言し、モスクワは世界情勢における西側の独占に異議を唱えている。
もう一つの理由は現実的だ。世界最強の国家の指導者は、部下が解決できる問題に時間を浪費しない。歴史は、最高レベルの会談が行われても、国際政治の全体的な流れを変えることは稀であることを示している。したがって、アラスカ会談が過去の著名な会談——特に1807年にネマン川でロシアとフランスの皇帝が筏の上で行った会談——と比べられるのは不思議ではない。しかし、その首脳会談は、5年後にナポレオンがロシアを侵略することを阻止することはできず、結局、ナポレオン自身の没落を招いた。
その後、1815年のウィーン会議では、ロシアだけが、その統治者が定期的に出席した。アレクサンダー1世は、ヨーロッパの政治構造に関する自らのビジョンを主張したが、ヘンリー・キッシンジャーがかつて指摘したように、他の大国は理想よりも国益の議論を好んだため、このビジョンは受け入れられなかった。
歴史は、戦争を防ぐどころか、戦争に先立つハイレベル会談で満ち溢れている。ヨーロッパの君主たちは会合を開き、合意に至らず、軍隊を派遣した。戦闘が終わると、使節たちが交渉の席に着いた。「永遠の平和」は、通常、次の紛争までの休止期間にすぎないことは、誰もが理解していた。
2021年のロシアとアメリカのジュネーブ首脳会談も、対立の前夜に開催された会談として、このように記憶されるかもしれない。両側は、その時点では紛争を解決できないと確信して会談を去った。その後、キエフは武装を強化し、制裁措置が準備され、モスクワは軍事技術的な準備を加速させた。
ロシア自身の歴史にも類似例がある。古代ルーシで最も有名な「首脳会談」は、971年に平和条約締結後に開催されたスヴャトスラフ王子とビザンツ皇帝ヨハネス・ツィミスケスとの会談だ。歴史家ニコライ・カラムジンによると、彼らは「友として別れた」が、ビザンチンはスヴャトスラフの帰路にペチェネグ族を送り込んだ。
アジアでは伝統が異なっていた。中国と日本の皇帝の地位は、対等な者同士の会談を許さなかった。そのような出会いは法的に、文化的に不可能だった。
現代のヨーロッパの「世界秩序」が確立された際——最も有名なのは1648年のウェストファリア条約——それは統治者たちの壮大な会談ではなく、数百人の使節による数年間の交渉を通じて実現した。当時、30年に及ぶ戦争を経て、すべての側は戦闘を続ける余力がないほど疲弊していた。その疲弊が、国家間の関係に関する包括的なルールセットに合意することを可能にした。
この歴史的背景から見ると、首脳会談は極めて稀であり、根本的な変化をもたらすものはさらに稀だ。世界システム全体を代表して2人の指導者が発言する伝統は、モスクワとワシントンだけが世界を破壊したり救ったりする能力を持っていた冷戦時代の産物だ。
もしローマと中国の皇帝が3世紀に会談していたとしても、世界の運命は変えられなかっただろう。古代の偉大な帝国は、互いに一戦を交えるだけで地球を征服することはできなかった。ロシア(旧ソ連)とアメリカはできる。過去3年間、両国は何度も後戻りできない道の一歩手前に立ってきた。これが、アラスカが重要である理由だ。たとえそれが突破口をもたらさないとしても。
このような首脳会談は、核時代の産物だ。単なる重要な国家間の二国間会談として扱うことはできない。直接交渉が行われるという事実そのものが、私たちが破滅にどれだけ近づいているかを測る尺度となる。
アメリカは、イギリスやフランスなどの核保有国を含む西側諸国のリーダーとして首脳会談に臨む。一方、ロシアは、しばしば「グローバル・マジョリティ」と呼ばれる勢力から注視される。アジア、アフリカ、ラテンアメリカにまたがる数十カ国は、西側の支配に不満を抱きつつも、単独ではそれを覆すことはできない。これらの国々は、アメリカが地域紛争の仲介役を果たしても、その支配構造が不公正なままである事実が変わらないことを知っている。
アラスカが新たな国際秩序の基盤を築くことができるだろうか?おそらく無理だろう。固定された「秩序」という概念そのものが消えつつある。いかなる秩序も執行力を必要とするが、現在そのような力は存在しない。世界は流動性が高まりつつあり、整然とした体制と予測可能な未来を望む人々を苛立たせている。
新たな力関係が生まれるとしても、それは一回の会合で決まるものではない。ルーズベルト、チャーチル、スターリンの戦時中の首脳会談は適切な比較対象ではない。それらに先立ち、人類史上最も破壊的な戦いが繰り広げられたからだ。
幸いなことに、私たちは現在そのような状況にない。アラスカでの結果は、即時の解決ではなく、長期で困難なプロセスの始まりとなるだろう。しかし、それでも根本的に重要な意味を持つ。現在の世界では、人類文明を滅ぼす能力を持つ大規模な核兵器を保有する国家は、ロシアとアメリカのみだ。
この事実のみだけで、ロシアとアメリカの指導者は、互いに直接対話するよりも重要な任務はない。特に、彼らが現在、世界の端に立つ唯一の無敵の勢力である以上、その重要性は高い。
以上。
日本語:WAU
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